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近況報告2006年7月2日
早川千晶

カテンベ腎臓移植基金の設立にあたって
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左からカテンベ、ジョン、ジョージ、ママアドリ、ジャネット

今日は日曜日。カテンベの家に、マシモニ・ユース・グループの面々が歌を歌いにきてくれました。
カテンベが大好きなマシモニ・ユース・グループ。カテンベはCDで彼らの歌を聞いていて、お気に入りの曲もあります。(大西匡哉制作のCD,TWENDE NYUMBANIキベラスラムの歌声Vol.1にも彼らは参加しています。)
今日はなんと、彼らが歌でカテンベを励ますために、カテンベのためだけのライブをカテンベの家でやろう!ということになったのでした。
マシモニ・ユース・グループはキベラスラムの若者たちが集まり、リーダーのジョンが3年前に結成したゴスペルグループです。ジョンは夜勤の警備員の仕事をしていますが、夕方6時から朝6時までの仕事があけると、ちょっとだけ仮眠をとってから午前10時にはマゴソスクールに来ます。ボランティアで子供たちに音楽指導をしたり、洋裁教室で練習したりしてから、また夜勤の仕事に出かけていきます。警備員の仕事は月給8千円でとても薄給なのですが、その収入で彼は引き取った孤児の子供たち3人と自分の子供、そして奥さんと共に暮らしています。
グループメンバーは13人。そのほとんどが、無職のスラム住民たちです。働きたくても仕事がありません。スラムの若者たちは、がんばって苦学しても、学校を卒業してからあとに就職先がないことが、大きなストレスになっています。未来に希望を持てず、自暴自棄になってしまう若者も多く、犯罪に走る種になってしまいます。そこでジョンは、そんな若者たちを集めて音楽グループを作りました。ジョンは貧しい農村の出身者ですが、小さいときから歌が好きで、小学校6年生のときから作曲をはじめました。いつも頭の中で音楽が鳴り響いているのだそうです。マシモニ・ユース・グループは歌を歌うことで、がんばって生きていこうよ!という想いを伝えたり、エイズは怖い病気だという情報を伝えるなどの活動をしています。スラムのあちこちでこれらの歌を歌うだけでなく、地方の村々にも巡業します。彼らの素晴らしいハーモニーと、魂の奥底からあふれてくるメッセージを乗せた歌は人々の心を打ち、今では、遠くウガンダまで彼らの歌が歌い継がれていっています。
さて、大好きなマシモニ・ユース・グループが自分だけのために歌いにきてくれた!と、カテンベは大喜び。ひそかにママとメジラ(妹)も大喜びでした。だってカテンベは透析への往復以外はほとんど家から外に出ることができません。いつも一家で家の中に閉じこもっていなければならないので煮詰まるときもあるけど、ラジオやCDを聞くことが一番の楽しみなのです。何度も何度も繰り返し聞いていたマシモニ・ユースの歌。それを今日は、目の前でナマで聞けるのである!

狭い家が人だらけになるほどのお客さん。マシモニ・ユース・グループ10人と、子供たち4人が来てくれました。そして、歌がはじまりました。

スワヒリ語の歌やルオ語の歌です。カテンベはルオ語がわかりませんが、意味がわからなくてもスピリットが伝わってきます。キベラプラザのアパート中に、彼らの歌声が響き渡りました。力強い歌声、そしてソウルフルなハーモニーです。近所の人々も、なんだ、なんだとのぞきにきました。部屋の中は、彼らの歌声につつまれました。部屋の中をぐるぐるとハーモニーが渦を巻き、私も頭の中がぐるぐる巻きになりました。
彼らはなんと、2時間も休みなく歌い続けました。カテンベも一緒に歌いました。
台所では、ママとメジラが踊りながらチャパティを焼いていました。
歌い終わってから、カテンベに励ましの言葉をかけてくれました。
「カテンベは病気で苦しんでいるけど、ひとりじゃないよ。心はみんな一緒にいるからね。」
カテンベは、うん、うんとうなずいて、とても嬉しそうでした。

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ママは台所でチャパティを焼きながら歌を口ずさむ。おしりふりふり。

現在、キベラの歌声のCD第二弾を制作しているところです。レコーディングは昨年の11月から今年の2月で行い、それから匡哉がずっと編集作業をしています。マゴソスクールの子供たちとマシモニ・ユース・グループのコラボレーションのCDですが、ここに、カテンベの歌を含めたらどうかというアイディアが匡哉からあがってきました。カテンベはまだもう少し元気だった頃に、地元のモスクで評判の歌い手でした。かつてはたくさんの人々の前で歌い、その歌声が人々の胸を打ち、賞賛を受けていたということです。おじいちゃん、おばあちゃんたちがカテンベの歌を聴いて涙を流しながら賞賛していたのだそうです。

匡哉と私は、このキベラCD第二弾にカテンベの歌も加えて、利益の分配にカテンベ基金へのチャリティを含みたい、と考えましたが、これはマゴソスクールとマシモニユースグループに相談しなければならないと思いました。あくまで彼らの作品ですから、彼らがそれを承諾してくれるかどうか、7月1日にミーティングをして話し合いました。
すると、マシモニユースグループやマゴソ代表のリリアンがなんと言ったかというと、
「カテンベのことは緊急にお金が必要だ。私たちはそれを助けたいと思っても、助けるすべがない。だけどCDで協力できるなら、とても嬉しいことだ。私たちの印税すべてをカテンベにあげてくれ。」と、こんなふうに言い、みんな、そうだ、そうだと賛同しました。
惜しげもなくそんなふうに言う彼らに、私はとても驚いて、嬉しく思いましたが、CDを買ってくれる人たちはマゴソスクールやマシモニ・ユース・グループに対しても応援の気持ちを持ってくれているのだから、応援されているのはカテンベだけじゃないんだよ、と言いました。だから、カテンベだけじゃなくてマゴソもマシモニユースもCDから利益を得て向上していけるよう、みんなで分配するのがいいのでは、と提案しました。
話し合った結果、売り上げの10%をカテンベ基金へのチャリティとすることで決定となりました。マシモニ・ユースとマゴソスクールが自分たちの印税を削ってチャリティとして提供してくれることになりました。

CDのタイトルは、IENDE MBELE(前進)に決定。
9月15日リリースを目指してがんばっていますので楽しみにしていてください。

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マシモニユース、立ち上がって部屋の中を回りながら歌う。

マシモニユースとマゴソが歌うのは、キリスト教のゴスペル。カテンベが歌うのは、イスラム教の聖歌です。その中に、キベラの子供たちの多くの出身地であるビクトリア湖畔のわらべ歌や、ジョン作曲の歌も含まれています。
Vol.1のレコーディングの最中にはじめてマゴソにやってきた元ストリートキッドのトニーや、虐待を受けて逃げてきたアピヨ、母親が死んでから労働力として売られていたエミテワなどの歌声も含まれています。
トニーやアピヨは現在、カテンベの出身地のミリティーニ村で元気に暮らしています。キベラの子供たちとミリティーニ村の子供たちが一緒に暮らす家、「ジュンバ・ラ・ワトト」を作って7ヶ月になりました。宗教や言語が違っても、こうしてみんなで家族になれるし、お互いの人生を支えあうことができる、というのは、ほんとに素敵なことだなぁと実感しています。
by keep_music | 2006-07-04 14:35 | 経過報告
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